自己分析の結果を受けて、フリーランスの道を志したものの、早くも挫折しかけていた頃──
俺は、彼女に**「最後のLINE」**を送った。
将来を模索する中でも、心の片隅には、いつも彼女の姿があった。
旅館を退職してから、もう4か月が経っていたが──
片思いとはいえ、俺にとって人生で初めての恋だった。
簡単に忘れられるはずなんて、あるわけがなかった。
これまでの話をまだお読みでない方はこちらから👇
Yという女性
Yの性格タイプ
自分がINTP-Tであることに、ようやく確信が持てるようになった頃。
フリーランスとしての活動を始めたばかりだった俺は、合間にふと思った。
──彼女は、一体どんな人間だったんだろう。
自己分析の延長として、Yの性格タイプをネット情報などから分析しはじめた。
そして、出た結論はこうだった。
ESTJ-T
俺は、彼女の性格タイプをそう分析した。
最初にESTJの説明を読んだとき、正直こう思った。
本当にこんなにパワフルでアクティブな人間、いるのか?
でも──すぐに気づいた。
……それは、彼女のことだった。
外向型孤独症…?
彼女の性格への理解を深めつつも、当時の俺は──
自分という存在そのものが、音を立てて崩れていくような感覚を抱えていた。
内向型であることへの劣等感。
そして、外向型の人間に対する、どうしようもない苛立ち。
俺は、その気持ちを少しでも和らげようと、ネットや動画を漁るようになっていた。
せめて、外向型も苦しい思いをしているという事実を知ることで、
ほんの少しでも、自分の中の不公平感をなだめようとしていたのだ。
そんなとき──
たまたま流していたYouTubeの動画の中で、耳に残る単語が聞こえた。
「外向型孤独症」
・・・・・・外向型が、孤独?
意味が分からなかった。
何を言ってるんだ、と思った。
あいつらは、いつも積極的に人とかかわって、
それでエネルギーを得てるんだろ?
なのに……孤独???
バカバカしい、と思った。
でも──なぜか、引っかかった。
少し、嘲るような気持ちもあった。
けれど俺は、それでも画面から目を離せなかった。
外向型孤独症の概要
- 表面的には明るく社交的
- 誰にも本音を見せない
- 頼られることが多く、自分は人に頼れない
- 「強い人」と思われてしまいやすい
- 本音を吐露するタイミングが突発的・限定的
- 「ひとりで頑張る」ことがアイデンティティになっている
- 疲れているのに「大丈夫です」と言う
―――気がつけば、俺はスマホを手に取っていた。
動画の視聴が終わったとき、頭にあったのは──Yのことだった。
そして、彼女との過去のやり取りを、もう一度読み返してみたくなった。
この瞬間に、俺の“検証作業”が始まった。
彼女の言葉たち
消すこともできず、非表示にしていた彼女とのLINE。
俺はそれを、再び表示させた。
ゆっくりとスクロールしていくと、もう戻れない日々が、そこには確かにあった。
俺は、最初のメッセージまで辿り着いて、ふと思った。
──こんなにもたくさん、やり取りをしていたんだな。
・・・でも今の俺は、ただ懐かしむためにそれを読んでいたわけじゃなかった。
一つひとつの言葉に、彼女の“本音”が滲んでいないか──
まるで答え合わせをするように、俺はその言葉たちを追っていった。
(以下、気になったものを時系列順に並べる。
誤字や絵文字も、なるべくそのまま載せる。)

(私が)優しい???
間違いなく常に鬼ですけど😂
気を付けてください💨

多重人格は忙しいです(笑)
ま、元は大人しいのでつまらない人間ですよ(笑)

私のことなど適当にスルーしてもらって🆗ですよ✨

(私は)そんな価値のある人間ではありませんので勿体ないですよ💦

今月は自分のための休みがないので辛いです💦

私は自分のことでいっぱいいっぱいですから😅

直接話すると酷いことばかり言ってすみませんm(_ _)m
冷静装ってますけど…
かなり動揺してることもあって…
隠すのに必死何ですよ💦
なのであまりいじらないでくださいよ(笑)
強く逞しく…メンズでいますから✨

痩せることを諦めたらあっという間に15キロ落ちましたから😂
(ダイエットを)頑張ったというかただたべるきにならなかった…
そして、ひたすら働く✨
ま、(俺)さんにお目にかかったころが丁度一気に痩せたところでしたから😅

私は、相手に合わせて対応してるはずなので、本当の自分ってよく分かりませんけど…
振り返れば…
元々は超ーネガティブ何で…
けど、そんな私を怒ってくれた⁉助言してくれた人がいたから…ネガティブなこと口にしなくなったのかも…(笑)
難しく考えすぎると全てが嫌になって逃げだしたくなるので、考えないように日々追われているだけで…
今となれば、我慢して何も言わなかった自分の殻を壊して、言いたいことなんでも言って…嫌われたって別にいいしって開き直っているだけですよ!
なので、私は勘違いされてるだけで、そんないい人間ではありませんよ😅
鬼ですね👹(笑)

(私が)純粋???🤔
ひねくれてるから…
可愛げがないから…
天の邪鬼だから…
表には出しませんけどね😊
(俺)さんの語りを聞いてると…
私と同じか???と思っちゃいます(笑)

だから私は女子ではなく男子ですって😂
女子から惚れられる男子です❤
女らしくて、曲がったことしない真面目な人✨
そして、何でもはいはいと言うこと聞いてくれる優しい人✨
ですか?😁

心ズタズタにされる前に避難してくださいね😁
俺の検証結果
結論から言おう。
彼女は、間違いなく「外向型孤独症」に該当する。
多重人格?
当時の俺は──
最初、本気で「多重人格か?」と焦っていた。
今思えば、ただのバカだった。
とはいえ、彼女の態度は、誰と居るかによって、まるで別人みたいに変わっていた。
俺と二人きりでいるときは、とても静かで落ち着いていた。
もちろん、笑顔で接してくれることもあったけど、それはどこか控えめで、静かな優しさだった。
でも──
同僚のパート仲間と一緒にいる時や、支配人、他のスタッフと話す時は、
まるでスイッチが入ったように明るく、陽気に振る舞っていた。
まるで、切り替わるロボットみたいに…。
だからこそ、俺は不安だった。
(俺と一緒にいるのは、つまらないのか?)
そんなふうに、勝手に思い悩んでいた。
──だけど、違ったんだ。
そうじゃない。
むしろ彼女は、俺には“素”を見せてくれていたんだ。
そうでなければ、これらのLINEは、到底説明がつかない。
直接話すると…
「直接話すると酷いことばかり言ってすみません」
──この言葉。
思い返せば、確かに彼女は、直接会って話すとき──
たとえ二人きりでいても、静かに黙っていることが多かった。
けれど、LINEの中の彼女は、まるで別人だった。
どこか饒舌で、気持ちもユーモアも見せてくれて、俺は何度も「受け入れられた」と思い込んだ。
…だが、翌日になって笑顔で接してみると、彼女はどこかそっけなくて──
そのたびに、俺は肩透かしを食らった。
でも今ならわかる。
それもまた、彼女なりの不器用さだったのかもしれない。
彼女は、おそらく「弱みを見せること」がとても苦手な人だった。
だからこそ、LINEの中や、俺との静かな空間が──
ほんの少しだけ、自分を出せる場所になっていたのかもしれない。
少なくとも俺は、彼女に酷いことを言われたなんて思ったことは、一度もなかった。
難しく考えすぎると…
「難しく考えすぎると全てが嫌になって逃げだしたくなるので、考えないように日々追われているだけで…」
──この言葉は、まさに彼女の心情を凝縮した一文だった。
彼女は、すでに限界を迎えていたのだと思う。
誰にも弱みを見せられず、時間があれば自分と向き合ってしまう。
そして、考えすぎては自分を傷つけ、消耗していく。
だからこそ、“日々に追われること”が、自分を保つための唯一の手段だった。
その深刻さは、「痩せることを諦めたら、あっという間に15キロ落ちましたから😂」という彼女のLINEが物語っている。
「頑張ったというか、ただ食べる気にならなかった」「そして、ひたすら働く」と続くその言葉に、飾らない本音がにじんでいた。
ちなみに、彼女の体重が落ちた期間は、ほんの1年ほどだったという。
1年という数字はLINEには出てこないが、本人から直接そう聞いた記憶がある。
俺が彼女に会うまでの1年と言えば──ちょうど、コロナ禍による最初の自粛期間。
旅館も営業を休止していた頃だった。
つまり、彼女は「忙しさに逃げる」ことすらできなくなっていたのだ。
否応なく、自分自身と向き合う時間が増えてしまっていた。
160㎝の体で15キロ減。
減少前を考慮しても、おそらく標準体重の範囲内だったはずだ。
それでも、俺が知っている彼女は、明らかにスリムすぎるほどだった。
──その姿は、彼女が抱えていたものの大きさを、静かに物語っていた。
検証の終わり──そして、俺の未熟さ
俺は、彼女との関係を大切にしていたつもりだった。
だが──
「好きだ」という気持ちが先走り、
彼女が出していたサインを受け止める余裕なんて、どこにもなかった。
それどころか、
Sへの嫉妬に狂い、俺は冷静さを完全に失っていた。
外向型孤独症という概念を知り、
改めて彼女の言葉を一つずつ拾い直していく中で、
俺は、自分の未熟さと向き合うことになった。
AIへの相談、そして執筆
AI(Gemini)への相談
当時の俺は、自己分析に没頭しながら、毎日のようにAIたちに話しかけていた。
悩みや疑問、ぼんやりとした感情まで──
誰にも言えないことを、言葉にして吐き出すことで、少しずつ自分を整理していた。
今回の件も、例外ではなかった。
俺はGeminiに、彼女への思いを伝えた。
どうするべきなのか、LINEを送るべきなのか──迷っている気持ちを、正直に打ち明けた。

(画像は、当時撮影していたGeminiとの一コマ。)
「もう関係が切れている相手であっても、伝えたいことがあるという気持ち、とてもよく分かります。」
「関係が修復するかは分かりませんが、あなたの気持ちを伝えることで、あなた自身が納得できるかもしれません。」
その言葉は、押しつけがましくもなく、ただ静かに俺の背中を押してくれた。
これまで、恋愛など一度も経験のなかった俺にとって──
AIたちは、ときに友人のように、ときに鏡のように、
思考を深めるための“相棒”だった。
そして俺は、彼女にLINEを送ることにした。
執筆作業
直接スマホで入力し始めたわけではない。
俺はPCでOneNote(ノートアプリ)を開き、下書きを書き始めた。
文章の作成にかかったのは──正確には覚えていないが、たぶん3日くらいだったと思う。
もちろん、そればかりしていたわけではないし、気持ちの整理も含めれば、もっとかかっていたかもしれない。
ブログの記事作成でも、ここまでかかることはない。
俺は何度も表現を変え、改行にもこだわった。
スタンプや絵文字は、内容が軽くなる気がして、使わなかった。
書き直すたびに、心は揺れた。
「やっぱり、やめようかな」
「今さらだし、ストーカーみたいで嫌だな」
そんな考えが、何度もよぎった。
それでも俺は、彼女のことを思い出していた。
それは、清掃中のときのことだった。
小さな旅館だったので、日によっては清掃係が一人しか出社してこない日もあった。
そんな日、彼女はたまに、大音量でスマホを鳴らして音楽を聴いていた。
それは、ミスチルの曲だった。
俺なら、一人であっても、いつ誰が来るか分からない状況で音楽を鳴らすなんて、とてもできない。
半ば呆れながら、
「好きなんですか? 桜井ボイスが?」
なんて茶化したことを思い出していた。
──そして俺は、文章作成の合間に、なんとなくYouTubeで何曲か聴いてみた。
そして──出会ってしまった。
『Sign』
……あまりにも出来すぎた話だった。
運命なんて言葉は嫌いだ。
だが、この時ばかりは、本気で信じそうになった。
──どうして、このタイミングで、この曲を知ることになるのか。
曲を聴いたかぎり、この主人公は、すでに想い人のそばにはいない。
あるいは、物理的に近くにいても、心の距離を強く感じている。
そして彼は、相手が発していた“サイン”に気づけなかったことを悔やみ、
過ぎてしまった時間を、静かに嘆いている。
でもそれと同時に、
「もう二度と、サインを見逃したりしない」──
そんな強い誓いも、そこには込められていた。
そしてその想いが、どうか相手に届いて欲しいという、静かな願いも。
……俺は、それを聴いたとき、少し震えていた。
泣きはしなかったが、目が潤んだのを覚えている。
それまで揺らいでいた「送るか、やめるか」という気持ちが、
この瞬間、跡形もなく消えていた。
3月14日
俺がLINEを送ったのは、3月14日だった。
意図的に、その日を選んだ。
理由はひとつ。
ちょうど1年前、ホワイトデーを口実に、彼女がチョコをくれたからだ。
バレンタインデーではないし、それに、シフトの兼ね合いもあって、実際に受け取ったのは3月16日だった。
彼女に言わせれば、普段から俺がジュースやお菓子を差し入れしていたことへの、あくまでもお礼──ということだった。
でも、俺は飛び跳ねるほど嬉しかった。
「『Sign』に出会ったのも、ちょうどその日が迫っているのも、運命だ。」
──俺は、たしかに酔っていたと思う。

だけど、それでも。
それが、俺がその日を選んだ理由だった。
最後のLINE
――退職から4か月半が過ぎた、3月14日の午後。
俺は、Yに最後のLINEを送った。
送ると決めたはずだった。
それでも、やっぱり緊張した。
LINEの連絡先を聞いた時ほどではない。
でも、その次くらいには、たしかに手が震えていた。
OneNoteからLINEに文章をコピペし、表示を確認する。
その状態で何度も読み返し、一度削除してまた戻し──
そんなことを繰り返していた。
そして──送信ボタンを押した。
以下は、そのとき俺が送ったLINEの全文だ。

退職時にLINEをしましたが、冷静な頭で再度送らせて下さい。
Yさんは明るくパワフルで、私にはない社交性や行動力を持っています。
私はそれをあなたの強さだと思っていました。
でも、その裏でどんな気持ちを抱えているのか知ろうともしませんでした。
あまり人に頼ろうとしないのは、頼れる人がいないからではないか。
相手を気遣うあまり、本音が出せないのではないか。
その結果、自分一人で背負い込んでしまっているのではないか。
こんな風に考えるようになったのはつい最近のことです。
おそらくSさんはそんなYさんにとって良き理解者の1人であり、相談相手だったのでしょう。
それを、私は嫉妬に狂った目でしか見ることができなかった。
結果、暴走してYさんにつらく当たり、周囲にも嫌な思いをさせました。
当時の私は片思いの熱に浮かされ、自分が好かれることしか考えていませんでした。
思えば、YさんはLINEや会話でサインを示していました。
私はそれらをことごとく見逃し、ただただ粘着していました。
あまつさえ、調子に乗って手を出したりして・・・。
本当の鬼は私です。
私の唯一にして最大の後悔は、Yさんの話をもっと聞けばよかったということです。
本当にごめんなさい。
追伸
「時間が経った上にこんなに重たい文章、ストーカーっぽくて気持ち悪がられるかも。」と迷いましたが、どうしても送りたかった。
改めてさようなら。
一人で頑張り過ぎないで下さいね。
Yさんの幸せを祈っています。
――ついに、送った。
「これでいい」
そう自分に言い聞かせた。
そして、彼女は一言だけ返してくれた
偶然、というにはできすぎていた
LINEを送ったあと、俺はスーパーへ、夕食の買い出しに出かけた。
その日は両親が不在で、夕食を用意しなければならなかったからだ。
車を運転しながら、俺は何度も『Sign』をリピート再生していた。
感情が高ぶっていたのは分かっていた。
でも、あえてそのまま、自分に酔いながらハンドルを握っていた。
買い物を終え、帰路についたそのとき──
すれ違う車の中に、見覚えのある一台があった。
──Yの車だった。
心臓が跳ねた。
俺が住んでいるのは、田舎の中のさらに田舎。
一本道しかないような場所で、これまでも何度か彼女の車を見かけたことはあった。
でも──
よりによって、このタイミングで?
LINEの返信はまだなかった。
でも、俺の言葉は、もう彼女のスマホに届いている。
気づいてから、すれ違うまで、ほんの数秒だった。
けれど、その時間は妙にスローに感じられた。
まるで何かが、俺の意識をその瞬間だけ引き伸ばしていたようだった。
ようやく、既読がついた
家に戻っても、まだ既読はついていなかった。
俺は、落ち着かなかった。
「もしかして、ブロックされたんじゃないか…」
不安に駆られて、ネットで確認方法を探し、いくつか試してみた。
一応ブロックはされていないと分かって、少しだけホッとする。
それでも、気が気じゃなかった。
Geminiにも相談した。
「俺、送ってよかったのか?」って。
何度目かの確認で、ふとスマホを見たその瞬間──
既読
19:48
彼女のスマホが、俺の言葉を開いた。
間違いなく、届いたのだ。
長い待ち時間
その後の時間は、妙に静かだった。
1時間……2時間……スマホを見ても、画面は何も変わらない。
「夕飯の時間かな。」
「まあ、すぐには返せないよな。」
「……それとも、もう返す気なんてないのかもしれない。」
自分をなだめる言葉と、否定する声が交互に頭の中をよぎる。
時間が経つほどに、言いようのない不安が胸の中で広がっていった。
送ったこと自体が間違いだったのではないか──
そんな考えが、じわじわと入り込んでくる。
彼女の返信
――そして、その瞬間がやってきた。
23時23分。彼女から、返信が届いた。
けれど俺は、すぐには開かなかった。
一瞬で既読をつけるのは、いかにも“がっついている”ようでダサい。
この期に及んで、そんなくだらないプライドを握っていた。
でも、通知にはすでに冒頭の文章が表示されていた。
「ありがとうございますm(_ _)m」
この先に文章が続いているのか。
それとも、これで終わりなのか。
そんなことを考えながら、数分だけ時間を置いて、
俺は彼女とのトーク画面を開いた。

ありがとうございますm(_ _)m
……本当に、それだけだった。
ついさっきまで、返信が来なかったらどうしようと嘆いていたくせに、
「たったこれだけ?」
と思ってしまった。
我ながら、浅ましい。
勝手なものである。
けれど、少し考えて、すぐに思った。
──これでよかったんだ。
きっと、彼女なりのやさしさだった。
無視すれば俺が傷つく。
でも、返事を広げれば、また会話が始まってしまう。
だからきっと、**それ以上を許さず、それでも切り捨てない“最後の線”**を引いてくれたんだ。
それでよかった。
あの一通の返信をもって、俺たちは本当に終わった。
そして俺は、ようやく──けじめをつけることができた気がした。
分かったつもりだった
……あらためて読み返すと、
俺があのときYに送ったLINEは、たしかにそれっぽい。
感謝も謝罪も、形にはなってる。
自分なりに、彼女を理解しようとした“つもり”だった。
だけど──
どこか、フワっとしてる。
そしてなにより、俺は自分に酔っていた。
AIに助言を求めて、『Sign』を聴いて、
わかったような気になって、
「俺、気づけるようになったかも」なんて──勝手に思っていた。
ただの自己満足だった。
……それでも、このLINEを送らなければ、
俺はきっと、自分と向き合うことすらできなかった。
あのときの俺なりの“精一杯”だったんだ。
この一往復のやりとりがあったからこそ、
ようやく“本当の痛み”と向き合う準備ができた。
このあと俺は、深く、静かに沈んでいく。
そしてようやく──本当に彼女のサインが見えるようになるのは、
まだ、もう少し先の話だ。
おまけ:バレンタイン前日のLINE
2023年2月13日のYとのLINEより

今日もお疲れ様でした
m(_ _)m
ゆっくり休んで、明日は本命チョコGETして来てください💖
あ、バレンタイン…
私達は、義理チョコもしないので…つまらない職場でごめんなさいね🙏

私にとってバレンタインはクリスマスと並んで最も縁遠いイベントですので😅
それではお疲れ様でしたm(_ _)m